取材・文:名畑政治 / Text:Masaharu Nabata
札幌駅前の旗艦店「GRACIS札幌駅前店」をはじめ、札幌市内に4店舗を展開する高級時計の正規販売店「GRACIS(グラシス)」。
創業から今年で50年。千歳市で宝飾・時計修理店としてスタートし、1990年代初頭に拠点を札幌へと移動。
2016年に「GRACIS札幌駅前店」をオープンし、現在は道内最大級の売り場面積と品揃えを誇る高級時計専門店としてその名を轟かせる。
この『グラシス』二代目経営者である宮本建次社長に、時計の販売と顧客サービスへの情熱をGressive編集長・名畑が聞く。
名畑:私がまず知りたかったのは『グラシス』という店名の由来です。ここにはどんな思いが込められているのですか?
宮本:「私自身、“感謝”という言葉が大好きなんです。それはお客様に対してはもちろん、スタッフに対しても常に感謝の気持ちで応対したいということです。
そこで、“感謝”という言葉を、どう形にしたらいいかと考えたとき、スペイン語の“グラシアス(Gracias)”という言葉を思い出したのです。そこで“グラシアス”をちょっとひねって『グラシス』という言葉を作り、これを店名としました」
名畑: その『グラシス』は、もともと時計修理店を母体としていたということですが、それを宮本さんは継承されたんですね。
宮本:「そうですね。時計修理と宝飾事業を行っていたのですが、私が事業を継承したときには宝飾が中心でした。
そこで私はインドや東南アジアまで宝石の原石を買い付けに行き、それを輸入して専門工房でジュエリーに加工して販売することに注力したのです。
宮本:ところがその頃、店主の高齢化や携帯電話の普及による“腕時計ばなれ”により、老舗の時計店が次々に閉店し、札幌における腕時計の市場は縮小の一途を辿っていたのです。
そこで私は札幌での時計販売を再活性化させるのと同時に、専門店の強みを活かして時計を購入された方に生涯顧客になっていただくことが、もっとも大事ではないかと気づきました。
デパートでは、どうしても数年でスタッフが入れ替わります。でも専門店なら20年、30年と同じスタッフが在籍していることも多く、お客様の顔もしっかり覚えられますし、購入された時計のメインテナンスを継続できる素地がありますから」
名畑:そういった息の長い顧客とのお付き合いは、まず魅力的で長年の愛用に耐える時計を扱うことが大前提ですね。
宮本:「はい。当社の主軸ブランドであるブライトリングやグランドセイコーは、メーカーの対応がしっかりしています。
そこが我々の生涯顧客という考え方とマッチしていると感じます。
たとえばブライトリング・ジャパンでは正規店で買っていただいた方と並行輸入品を買った方をしっかり区分けしています。
正規店購入品であればオーバーホールは会員料金で対応しています。この安心感が一生お客様とつきあえる基盤となり、我々の考え方とフィットするのですね。
それに、こういったブランドの腕時計は数十万円から数百万円はしますから、永年に渡ってメインテナンスをしっかりさせていただくことで、最初に買った方だけでなく、お子様やお孫さんにも受け継いでいただけます。その信頼や安心感が正規店として地域密着で事業を続けていく場合は特に重要だと思うのです」